日本は世界的に見てリサイクル率の低い国です。
その理由の1つには、燃やして処理する焼却大国であることが挙げられます。
そこで近年注目されているのがリサイクルプラントです。
本記事ではリサイクルプラントの概要やメリット・デメリットなどを解説します。
- リサイクルプラントとは廃棄物を再生、再利用するための処理を施す工場や施設のこと
- リサイクルプラントでは廃棄物の処理の過程で「粉砕」「分別」「再利用化」や「燃料化」などを行っている
- リサイクルプラントで処理される廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の2つに分類することができる
- リサイクルプラントでは「マテリアルリサイク」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3つの方法が用いられている
- リサイクルプラントを活用するメリットは「ごみの減量化」「環境汚染の防止」「二酸化炭素排出量の削減」など
- デメリットは「コストの負担がかかる」「処理方法によっては二酸化炭素が発生する」「リサイクル施設が不足している」などの問題点がある
それでは早速見ていきましょう。
リサイクルプラントとは?

現在、この地球上ではたくさんの廃棄物や不用物が様々な公害を引き起こしています。
特に日本においては、主に燃焼することでほとんどの処理を行ってきた結果、温暖化ガスやダイオキシンなどの大きな課題を抱えています。
そうした問題を解決すべく活用されているのがリサイクルプラントです。
リサイクルプラントとは、廃棄物を再生、再利用するための処理を施す工場や施設のことを指します。
主に、食料廃棄物処理場やゴミ処理場などで活用されており、独立した施設の場合だけでなく、廃棄物を管理する過程を合理化するために埋め立て地に併設されていることもあります。
リサイクルプラントで行われている処理
一般的に廃棄物の処理は、回収→分別→収集・運搬→中間処理→最終処理の流れで進められます。
その流れの中で、リサイクルプラントでは次のような処理を行なっています。
- 破砕
- 破砕機を使用して廃棄物を処理しやすい大きさに破砕する
- 分別
- 粒度選別機、磁選機、アルミ選別機などを使用して可燃物、不燃物、鉄、アルミなどに分別する
- 再利用化、燃料化
- 分別した資源を原材料として再利用したり、可燃物を燃料として活用したりする
リサイクルプラントでは、リサイクルする材料や設備によってそれぞれ異なったリサイクル方法が行われています。
リサイクル方法の種類については、後に詳しく紹介していきます。
リサイクルプラントで処理される廃棄物の種類

リサイクルプラントで処理される廃棄物には、多種多様なものがあります。
大きく分けると「産業廃棄物」「一般廃棄物」の2つに分類することができます。
それぞれ内容を見てみましょう。
産業廃棄物
産業廃棄物とは、事業活動によって生まれた廃棄物のうち、廃棄物処理法で決められた20種類の廃棄物のことを指します。
いくつか例を挙げてみましょう。
- 鉱物性油や動植物性油などの「廃油」
- 研磨くず、鉄鋼・非鉄金属の破片などの「金属くず」
- 合成樹脂くず、合成ゴムくずなどの「廃プラスチック」
- コンクリートやアスファルトの破片などの「がれき類」…etc.
また、爆発性や毒性があり人体を危険にさらす可能性があるものについては「特別管理産業廃棄物」と分類され、取り扱いに注意が促されます。
一般廃棄物
一般廃棄物は、家庭や事業活動などで発生する、上記の産業廃棄物以外の廃棄物を指します。
一般家庭で生じる「家庭系一般廃棄物」と事業活動で生じる「事業系一般廃棄物」のほか、毒性や爆発性があり扱いに注意が必要な「特別管理一般廃棄物」の3種類があります。
「家庭系一般廃棄物」は市区町村、「事業系一般廃棄物」は排出事業者が主に処理の責任を請け負います。
また、一般廃棄物は、市区町村や事業者によって分類や処理能力が異なっているため、同じ廃棄物でも扱いが異なってくることがあります。
リサイクルプラントで行われる廃棄物の処理方法

リサイクルプラントでは、主に次の3つの方法を用いて廃棄物を処理しています。
- マテリアルリサイク
- ケミカルリサイクル
- サーマルリサイクル
上記のような3つの方法により、工夫してリサイクルが行われています。
しかし、これらの方法は環境によいことばかりというわけではなく、それぞれに課題も抱えています。
1つずつ具体的に見ていきましょう。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは、分別、洗浄した廃棄物を粉砕・加工して新たな製品の原料として再利用する方法です。
同じような類似製品の原材料として使われる場合もあれば、全く別の製品の原材料として使われる場合もあります。
例えば、廃棄されたペットボトルを原材料として再び新たなペットボトルとして製造する方法は「レベルマテリアルリサイクル」または「水平リサイクル」などと呼ばれています。
一方、ペットボトルが同じペットボトルではなく、食品用トレーや衣類など全く別の製品の原材料として使われるケースは「ダウンマテリアルリサイクル」と呼ばれています。
マテリアルリサイクルの分類
ある廃棄物が「レベルマテリアルリサイクル」されるのか「ダウンマテリアルリサイクル」されるのかは、その廃棄物の品質によって決められています。
廃棄物の品質が「レベルマテリアルリサイクル」に満たない場合に用いられるのが「ダウンマテリアルリサイクル」です。
つまり「ダウンマテリアルリサイクル」は、品質が下がっても製品として成り立つものに作り変えるリサイクル法ということになります。
ちなみにマテリアルリサイクのメリットとして、石油からプラスチック製品を作るよりも資源やエネルギーのロスを減らせるため、二酸化炭素排出量の削減が期待できます。
しかし、日本はヨーロッパ諸国と比較してマテリアルリサイクルのための設備が整っていないことから利用率の低いリサイクル方法です。
- 分別や再利用のためのリサイクル施設が不足している
- 設備費用、廃棄物の収集・分別などに必要な人件費などコストの負担がかかる
- リサイクルされた原材料は品質が劣化する
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、油化、ガス化などの方法で廃棄物の分解をして化学製品の原料として再利用する方法です。
例えば、廃棄物を溶かして分解し二酸化炭素・水素などの合成ガスを取り出したり、その二酸化炭素から炭酸ガスやドライアイスを製造したりします。
- 高度なリサイクル技術が必要
- リサイクル処理をするのに逆に石油や石炭などの資源が必要になる
- マテリアルリサイクル以上にコストの負担が大きい
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、焼却する際に発生する熱エネルギーを回収し、発電や施設の温水供給・暖房などに有効利用する方法です。
マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルに適さないもの、木材やプラスチック、使用済みの揚げ物の油などが対象となっています。
例えば、プラスチックの焼却による熱エネルギーは、ビニルハウス、温水プールなどの温度調整に活用されており、木材や揚げ物油などはバイオディーゼル燃料を生成しています。
日本においては、もっとも有効利用率の高い方法です。
- 二酸化炭素やダイオキシンなどを発生させるリスクがある
- 設備投資にコストがかかる
リサイクルプラント活用のメリット・デメリット

循環型社会を目指すリサイクルには様々なメリットがある一方で、デメリットや問題点も存在します。
ここでは、リサイクルプラントを活用することにおける長所と短所を見ていきましょう。
メリット
リサイクルプラントを活用することのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
主なものをいくつかまとめてみましょう。
- ゴミの減量化
- 資源の節約
- 二酸化炭素排出量の削減
- 環境汚染の防止
- 埋立地の使用を減らす
上記のようにたくさんのメリットが挙げられます。
リサイクルプラントを活用することで限りある資源を有効活用し、地球環境保護に取り組むことが可能です。
また、ゴミ処理費用や原材料を仕入れる際にかかるコストの負担を軽減することもできます。
持続可能な社会を目指すためには、このようなリサイクルプラントの活用の前に、1人1人がリサイクルを理解し意識して行動することが大切になってくるでしょう。
デメリット・問題点
リサイクルプラントを活用することのデメリット・問題点についても見てみましょう。
主なものをまとめると次のとおりです。
- コストの負担がかかる
- 品質の劣化は避けられない
- 処理方法によっては二酸化炭素が発生する
- 洗浄の工程が必要
- リサイクル施設が不足している
まず、リサイクルプラントを導入するには設備投資が必要になるうえ、それに携わる人件費もかかってくるため、コストの負担が大きすぎるというデメリットがあります。
また、リサイクル処理を施すことで再利用に使われる原材料の品質が落ちることは避けられません。
そして、ケミカルリサイクルによって発生する二酸化炭素、サーマルリサイクルによって発生するダイオキシン類は、オゾン層を破壊したり発ガン性物質を含んでいるなどの大きな問題も抱えています。
これらの問題は、今後も引き続き大きな課題として解決に向けて研究が進められていくことが期待されています。
リサイクルプラントを正しく理解して事業に活用しましょう!

いかがでしたか?
リサイクルプラントとは何なのか、廃棄物の種類やリサイクルの3つの方法、メリット・デメリットなどについて紹介してきました。
本記事のポイントをまとめると次のとおりです。
- リサイクルプラントとは廃棄物を再生、再利用するための処理を施す工場や施設のこと
- リサイクルプラントでは廃棄物の処理の過程で「粉砕」「分別」「再利用化」や「燃料化」などを行っている
- リサイクルプラントで処理される廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の2つに分類することができる
- リサイクルプラントでは「マテリアルリサイク」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3つの方法が用いられている
- リサイクルプラントを活用するメリットは「ごみの減量化」「環境汚染の防止」「二酸化炭素排出量の削減」など
- デメリットは「コストの負担がかかる」「処理方法によっては二酸化炭素が発生する」「リサイクル施設が不足している」などの問題点がある
昨今、リサイクルプラントは循環型社会を目指すための有効な手段として注目されています。
精度の高い信頼のおけるリサイクルプラント設備を提案する企業も増えつつあり、今後も新たな展開を見せる期待の分野と言えるでしょう。
コメント